ロコモティブシンドロームを予防しよう

ロコモティブシンドロームとは

「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」をロコモティブシンドロームといいます。略称は「ロコモ」です。運動器とは骨や筋肉、関節、椎間板などのことで、いずれか、または複数に障害が起こり、歩く・立つといった動作が困難になる状態です。
超高齢社会の日本では、平均寿命が80歳に達し、運動器の障害によって、日常生活に支援や介護が必要となる高齢者が増加しています。

ロコモの原因

ロコモになる原因として「加齢」と「運動不足」による筋力の低下で引き起こされるバランス能力の低下、骨や関節の病気が挙げられます。骨や関節の病気には骨粗鬆症や変形性膝関節症などがあります。
膝や腰に痛みや不調を感じても「年齢によるもの」だと放置しておくと、運動器疾患(骨粗鬆症や変形性膝関節症、変形性腰椎症など)が背景にあった場合、病状が進行し重篤化してしまうかもしれません。
関節を構成している軟骨や半月板などは、一旦すり減ると元に戻りません。痛みや不調を感じたら、医療機関を受診して適切な治療を受ける必要があります。運動器疾患による障害によって、移動機能が低下し、日常生活に介助が必要となるリスクが上がります。日常生活に介助が必要になると、自分で思うように動けなくなるため、外出が億劫になり、引きこもりがちになります。そうなると、意欲や活動量が低下し、さらに運動機能低下につながってしまうのです。
高齢者が要介護になった原因を見ると、転倒・骨折によるものが全体の2~3割を閉め、脳卒中といった脳血管障害と同程度かそれ以上です。ロコモの人は予備軍を含めて4700万人と推測されているので、ロコモを未然に防ぐことは大切です。

男女によるロコモのなりやすさの違い

要介護に移行する危険性についての研究では、年齢が最大の要因で、男女による統計の違いは明らかにされていませんでした。しかし、ロコモの兆候をチェックする「ロコチェック」によると女性の頻度がどの世代でも高くなっているそうです。また、ロコモに結びつきやすい骨粗鬆症は女性に多く、下肢筋力も女性のほうが弱い事を考えると、比較的なりやすいといえるかもしれません。
ただし、要介護のサービスを受けている人の約7割が女性ですが、平均寿命が長いことも大きな理由と考えられます。

気をつけたい転倒

家の中や家の周りで、つまずいたり滑ったりして転びそうになったことはないでしょうか。年を重ねていくと転びやすくなり、骨折などのケガをしやすくなります。たとえ骨折の症状が軽くても若い時に比べ回復に時間がかかります。さらに、転倒による不安や恐怖で活動性が低下し、活動性の低下が転倒リスクを増加するという悪循環を招きかねません。
転倒によるケガは移動機能の低下をもたらし、その後の健康的な生活を損なう原因となってしまうのです。
転倒の主な原因は加齢による身体機能の低下、病気や薬の影響、運動不足です。
加齢に伴い身体機能が低下し、とっさの動作が行えなくなります。また、自分自身が予測・期待する動作と現実の動作との間に齟齬が生まれて転倒を引き起こすことも。
また、年を重ねると、いくつかの病気を抱え、何種類も薬を飲んでいる人も少なくありません。薬の副作用によって立ち眩みやふらつきといった症状が出て転倒しやすい状態になっている場合もありますので、定期的に薬の種類や量を主治医と相談するようにしましょう。
さらに自宅で閉じこもりがちになると、日常的に体を動かす機会が減ってしまうことで、運動機能が弱まり、その結果転倒のリスクが高くなってしまいます。転倒を防ぐには、日ごろから体を動かし、身体機能の維持に努めましょう。

ロコモを予防するには

骨や筋肉は適度な運動や活動で刺激され、適切な栄養摂取によって維持されます。骨や筋肉が弱ってくると40代から身体の衰えを感じやすくなり、60代以降思うように動けない身体になってしまう可能性があります。
骨や筋肉はいくつになっても鍛えることができるため、思い立ったが吉日です。健康寿命を自分で延ばすという意識でロコモ対策に取り組みましょう。

適切な体重

ロコモにならないためには太りすぎも痩せすぎもいけません。中高年の男性の2人に1人、女性の5人に1人はメタボリックシンドローム(メタボ)、またはその予備軍といわれています。メタボは動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわる病気を招く危険性もありますが、それだけではありません。体重増加により腰や膝に負担がかかりロコモの原因となるのです。
一方、ダイエットや食欲不振によって栄養が不足すると、骨や筋肉の量が減ってしまいます。最近、食が細くなってきたなと思ったら要注意。
ロコモにならないために食事にも気を付けて、適切な体重を維持しましょう。

筋力の維持

骨や筋肉の量のピークは20~30代といわれています。そこから年齢を重ねるにつれて筋肉量は大きく低下していきます。その中でも下半身の筋肉の減少が大きく現れます。
日常生活において下半身の筋肉は重要な役割があり、座る、立つ、歩くといった動作に必要な筋肉です。下半身の筋肉低下は日常動作に支障をきたし、転倒や寝たきりの可能性を高めてしまいます。こうならないように日ごろから筋肉を使って、身体を動かすことが重要です。ウォーキングの様に持続的なトレーニングと、スクワットの様なトレーニングも取り組むといいでしょう。

筋力を強くするための食事とは

筋肉をつけるには運動だけではなく食事も大切です。加齢に伴い食事量が減り、低栄養状態になっている方も少なくありません。適切な食事で必要な栄養素を摂取していないと、運動をしてもなかなか筋肉はつかないのです。
筋肉をつける食事で意識して摂りたいのがタンパク質です。タンパク質は筋肉を作るのに重要な栄養素。タンパク質は身体の中でアミノ酸に変化し、筋肉を作る働きをします。
アミノ酸の中でも筋肉合成を特に促進するロイシンが含まれている食品を積極的に摂りましょう。ロイシンにはまぐろやカツオ、サンマ、鶏肉、牛肉、卵など日常的に摂取できる食品が多くあります。

骨を強くするための食事とは

骨の健康のためにはカルシウムが重要な栄養素です。しかし、カルシウムは体内に吸収されにくいため、効率よく摂取するため吸収を助けてくれる栄養素も一緒に取る必要があります。
それは、カルシウムの吸収を促進するビタミンD、骨へのカルシウムの取り込みを助けるビタミンK、骨の強度を支える重要な物質であるコラーゲンの劣化を防ぐビタミンB6、ビタミン12、葉酸など、これらを十分に摂ることが大切です。さらにタンパク質が不足すると骨密度低下を助長してしまうので、偏った食事にならぬよう1日3食、栄養バランスを整えましょう。

骨の強度に必要なカルシウム

骨の主成分であるカルシウムは、骨の強度を保つために欠かせない成分です。体内のカルシウムの99%は骨と歯に含まれ、1%は血液などに含まれます。血液中のカルシウム濃度は一定に保たれているため、カルシウムが不足すると骨からカルシムが使われてしまうので、骨が弱くなる原因となってしまいます。そのため、不足しないように食事から摂らなくてはなりません。しかし、カルシウムは吸収効率がよくないため、意識してカルシウムを摂る必要があります。
カルシウムを多く含む食品は乳製品や魚介類です。乳製品は良質の動物性タンパク質が豊富で吸収率も高く、手軽に食べられる食品が多いので、毎日の食事に取り入れやすいのが特徴です。魚介類は乳製品に比べると吸収率は低くなりますが、なじみの多い食材が多くなっています。骨ごと食べられる小魚やマリネ、南蛮漬けはさらにカルシウム量を多く含んでいます。

カルシウムの吸収を促すビタミンD

ビタミンDはカルシウムの吸収促進、骨の成長促進、血中カルシウム濃度を調節する重要な役割を持つ栄養素です。健康な骨を維持するため欠かせません。ビタミンDを補う方法は、日焼けしない程度の時間、週2~3回日光に当たることです。紫外線を浴びるとビタミンDが生成されます。
現代人は紫外線を避ける傾向が強く、不足傾向が指摘されています。ビタミンDはサンマやカレイなど魚介類に多く含まれているため、食事からも摂取することが可能です。

カルシウムの流出を防ぐビタミンK

ビタミンKは骨に存在するオステオカルシン(カルシウム結合タンパク質)を活性化し、カルシウムの骨への沈着を促して流出を防ぎます。また、コラーゲン生成を促進し骨質を改善するため、骨粗鬆症の治療薬にも使用されています。ブロッコリーやほうれん草、納豆などに多く含まれています。

骨質に効果的なビタミンB6やビタミンB12、葉酸

骨折を防ぐ骨の強度に重要なのは、骨のカルシウム量だけではなく、骨の性質すなわち骨質の良し悪しも関わってきます。骨質と骨量によって骨強度となります。ちなみに割合は骨量7に対し、骨質は3です。骨といえばカルシウムを連想しますが、コラーゲンも欠かせません。コラーゲンは骨の強度を支える重要なタンパク質です。
ビタミンB6やビタミンB12、葉酸骨質を高めるのに効果があります。ビタミンB6にはレバーやマグロ、ニンニク、ゴマなどに、ビタミンB12はサンマ、レバー、しじみなどに、葉酸は海苔や緑茶などに多く含まれています。

カルシウムの吸収を悪くする栄養素

組み合わせによってはカルシウムの吸収を悪くしてしまう栄養素があります。リンはカルシウムと結びつくと、リン酸カルシウムとなり体外へ出て行ってしまいます。リンはインスタント食品、ハム、スナック菓子に多く含まれるため、普段加工食品を食べる機会が多い人は注意が必要です。
アルコールはカルシウムの排出を促進させるといわれていますし、カフェインはカルシウムの吸収を阻害してしまいます。どちらも過剰に摂取するのは控えたほうがいいでしょう。